【見逃し注意】物的介助の落とし穴…その2

治療・訓練

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今回は…

物的介助の落とし穴…その2

というタイトルです。

前回の記事では

  • 物的介助とは
  • 物的介助のメリット
  • 物的介助のデメリット

についてまとめました。まだ見ていない方はこちらから。今回の記事では

  • 立ち上がり動作を例にした物的介助
  • NGな物的介助と理由
  • 適切な物的介助へ変更

これらの内容についてまとめました。ここからは実際の例を挙げて、動作に合わせた物的介助をまとめていきたいと思います。それでは早速スタートです。

立ち上がり動作を例にした物的介助

立ち上がり動作の獲得(自立)を目標に訓練を実施する際に、物的介助として「手すり」を使用するケースを例に考えます。

環境は、座っている患者さんの前方に手すりを設置した状態を想定してください。

この例をもとに、これからNGな物的介助と適切な物的介助への変更をまとめます。

NGな物的介助

まず、NGな物的介助は以下の通りです。ひとつずつ解説していきます。

  1. 肘が軽く曲がった状態でも手が届く位置に手すりがある。
  2. 肩よりも高い位置に手すりがある。

1.肘が軽く曲がった状態でも手が届く位置に手すりがある。この状態の物的介助では、立ち上がり動作に必要な重心の前方移動を妨げてしまっています。

立ち上がり動作は、臀部支持基底面の上にある重心を、足底支持基底面の上へ移動する必要がありますが、肘が軽く曲がった状態でも手が届く位置に手すりを設置すると、体幹を前へ倒して重心を前方へ移動したくても、手すりが邪魔になりできなくなってしまします。

また臀部支持基底面の上に重心が残ったまま、手すりを引っ張ることで重心の前方移動を代償した立ち上がり動作を反復して訓練を続けると「手すりを引っ張らないと立ち上がれない」という動作学習をしてしまいます。結果的に「手すりの無い環境では立ち上がれない」や「手すりの位置が違う環境では立ち上がれない」といった悪循環となります。

2.肩よりも高い位置に手すりがある。この状態の物的介助も、1.と同様に重心の前方移動を妨げてしまいます。

立ち上がり動作は、体幹を前へ倒して重心を前方へ移動し、足底支持基底面へ重心が移るタイミング(または直前)で臀部が上がり重心が上方へ移動していきます。しかし肩よりも高い位置に手すりがあると、重心の前方移動が不十分なままで、重心の上方移動へ移ってしまうために、臀部が上がってもすぐに落下してしまいます。そこを手すりを引っ張ることで代償した立ち上がり動作を続けると、1.と同様の悪循環となります。

適切な物的介助へ変更

上記のNGな物的介助を適切な物的介助へ変更すると、以下のようになります。

  1. 体を前に倒して手を伸ばしてもギリギリ届かない位置に手すりを設置。
  2. 体を前に倒した時の肩の高さに手すりを設置。

1.体を前に倒して手を伸ばしてもギリギリ届かない位置に手すりを設置。この環境に変更して立ち上がり訓練を反復することで、手で引っ張らずに重心を前へ移動することを動作学習でき、ギリギリ届かない位置に設定することで手すりが目標物にもなります。もし恐怖心から重心を前へ移動できない場合は、徒手的に介助して誘導することを反復しましょう。

2.体を前に倒した時の肩の高さに手すりを設置。この環境に変更して立ち上がり訓練を反復することで、早期に重心が上方へ行くことを抑制でき、臀部が上がりやすくなります。もし臀部が上がらなければ、手すりや目標物を更に低く遠くすると臀部が上がりやすいです。

まとめ

今回は物的介助の落とし穴…その2というタイトルで、前回の記事に引き続いて、物的介助について実際の例を挙げて解説していきました。

「手すりを使った立ち上がり動作訓練」という内容一つにしても、環境を工夫して考えることで動作の獲得(自立)を促したり、阻害したりすることがあります。まさに見逃がしてはいけない落とし穴です。

今回は立ち上がり動作を例に挙げましたが、これ以外にも起き上がり動作や歩行動作などの基本的動作の物的介助では見逃してはいけないポイントがたくさんありますので、今後まとめていけたらと思います。

基本的動作能力の改善のためにも「どうしたら物的介助や徒手的介助を外せるか」を常に考えながら治療・訓練を行うことが大切で、そこを意識することで介助の位置やタイミングなどにも目が行くと思います。

最後まで見ていただきありがとうございました。

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